基本的にその本が市場で販売された状態を「完本」と呼び、最も高い価格が付きます。
例えば、「函」、「カバー」、「帯」といったものが最初から付いていた場合には、本にそれら全てが揃っている場合に「完本」として扱われます。また、全集の場合には「月報」があるかどうかも「帯」等と同様に「完本」の重要な構成物となります。
それに対し、「本」のみの状態を「裸本」といい最も安い評価になります。
「函」この中で、最も価値の変動が大きいのが「函」で、「本」そのものより価格が高い場合があります。
例えば、最初の小説集である「性に眼覚めるころ」(大正9年1月5日新潮社より発行)は恩地孝四郎の装幀で、黄色の印象的な函が付いています。市場価格としては函附きで60,000~80,000円程度ですが、函欠けであれば15,000円程度で入手することができます。
「カバー」その次が「カバー」で、特に希少性の高い場合の「カバー」の有無は価格に大きく影響します。その代表的なものが「高麗の花」(大正13年9月5日新潮社から発行)や「庭と木」(昭和5年9月1日武蔵野書院から発行)等で、「カバー」の有無で数倍の価格が付くことも珍しくありません。
「帯」については、比較的新しいものに多く、最も古いもので「作家の手記」(昭和13年9月19日に河出書房から発行)あたりで、帯附きは、帯欠に対して2~3倍の価格となっています。
30年代の作品では、函装、カバー装にかかわらず「帯」附きが多くなっていますが、「日本の古本」を見ても、「帯」の有無での価格差は少ないようです。
もちろん、紙という非常に経年の影響を受けやすく劣化しやすい素材でできていますので、「完本」の状態のものでも「新本」と同じ状態のものは基本的に存在しません。そのため、通常の経年変化を考慮して評価されます。通常想定される経年変化と比較して、状態が良い場合には「美本」や「極美本」というように評価されます。逆にそれなりから悪い場合には、「並本」や「劣本」というように表現され、低い評価となります。
「パラフィンカバー」、「セロハンカバー」が附いたものもあります。30年代の「函」附きでは、その多くで「パラフィンカバー」、「セロハンカバー」が附けられていますが、それらの有無ではほとんど古書価に影響がないようです。どちらかというと「美本」「極美本」といった本の美醜ということで表現されるようです。
ただし、「聖処女」(昭和11年2月5日新潮社から発行)の本にかけられた「パラフィンカバー」には題名が印刷されており、その「パラフィンカバー」が附いたものは非常に貴重で高価格となっています。
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