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愛の詩集の真贋

「愛の詩集」は犀星の処女詩集ということもあり多くの版が出ています。また、複数の復刻版も出版されています。復刻の表示もないものもあり、悪意が無くても復刻の外函がない状態で流通すると真贋も区別がつかいない可能性もあります。ここでは、簡単にオリジナルを見極める方法を記載します。

「愛の詩集」(復原版) オリジナルではありませんが、見事な古色です。
以前ヤフオクで落札したものですが、それなりに経年の日焼けもしており雰囲気はオリジナルそのものでした。
「愛の詩集」(復原版)表紙
「愛の詩集」(復原版)見開き

奥附の比較

実は、冬至書房刊の復原版の奥附には、復刻の記載がありません。日本近代文学館社刊の奥附には下部に「名著復刻 詩歌文学館」の記載があり、また遊び紙には復刻版の奥附が印刷されているため容易に区別がつきます。
やはり問題は冬至書房刊の復原版で、以前ヤフオクで落札し、入手してみるとこの冬至書房刊の復原版でした。
復刻版といえども印刷されてから50年近くたっており、それなりに日焼け等の傷みもあり素人では見分けるのが難しくなってきています。

感情詩社刊
初版
冬至書房
復原版
日本近代文学館社刊
(ほるぷ出版)復刻版

日本近代文学館社刊(ほるぷ出版)復刻版の奥附頁の書影です。
その前の遊紙には、復刻版の奥附があります。
そのため簡単にオリジナルと区別がつきます。


簡単な鑑定方法

それでは、冬至書房刊の復原版と感情詩社刊の本物の区別はどのようにしたらよいのでしょうか。
確実なのは、下の写真にあるように厚紙表紙の貼り付け部分の芯で簡単に判ります。本物以外はビニール系の包帯のように編んだものを利用していますが、本物は紙を使っています。この方法は「抒情小曲集」の見分け方と基本的には同じです。
これ以外にも、表紙の紙質などいくつか違いがありますが、この部分が最もわかりやすい部分です。

感情詩社刊のオリジナル
芯には、紙が使われています。
冬至書房刊の復原版
右側の貼り付けの芯にビニール系の包帯のように
編んだものを利用しているのが判ります。

函の表に貼られた題箋の下部の文字ピッチにも違いがあります。左が感情詩社刊のオリジナルで、右が冬至書房刊の復原版ですが、オリジナル版は左寄せとなっており、三行の左側がほぼ揃っています。一方で復原版はセンタリングされているように見えます。



その他の鑑定方法

Ⅰ表紙の紙質に違いがあります。復原版の紙には艶がまったくありませんが、感情詩社刊のオリジナルには艶があり、並べてみると直ぐに違いがわかります。ただし、1冊のみ見た場合には判定が少し難しいかもしれません。
下の書影は、左がオリジナルで、右が復原版です。



冬至書房刊の復原版は、オリジナルより高さ(縦)のサイズが3㎜程度小さく191-192mmで作られています。
それに対し、オリジナルは実測して見ると194.5~195mmで、日本近代文学館社刊(ほるぷ出版)の復刻版はオリジナルと同じサイズで作成されています。
ちなみにこのHPで参考文献として紹介しています「明治・大正詩集の装幀」には巻末の【収録一覧】として各書籍に関する情報が記載されており、そこには「19.5×13.4」との記載があり、手持ちのものの実測と一致します。
そのため、その高さ(縦)を厳密に測ることにより判定することも可能です。

「愛の詩集」の背の書影です。
写真左より
「愛の詩集」感情詩社刊のオリジナル
「愛の詩集」冬至書房刊の復原版
「愛の詩集」日本近代文学館社刊(ほるぷ出版)復刻版
上記のⅡに記載の通り、冬至書房刊の復原版は明らかに高さ(縦)のサイズが小さいのがわかります。また、それに伴い背の金箔押しの字の位置も異なっています。
このサイズの違いについては、冬至書房刊の復原版には復刻等の記載がなく、オリジナルと区別できるように敢えて行っているように思われます。
一方で、日本近代文学館社刊(ほるぷ出版)復刻版はほぼオリジナルと同様のサイズで造られています。
また、背の造りにも違いがあり、オリジナルはやや丸みをもった角背、冬至書房刊の復原版は、丸背に近い角背、日本近代文学館社刊(ほるぷ出版)復刻版はほぼ完全な角背となっています。
全体的に考えると、日本近代文学館社刊(ほるぷ出版)復刻版がオリジナルに近い雰囲気を持っています。復刻版の表示ははっきり入ってしまってはいますが。

Ⅲ 函についてもサイズに違いがあり、オリジナルの高さ(縦)のサイズ201mmに対し、復原版は199mmと2mm程度小さく作られています。ただ、オリジナルの本も復原版の函にすっぽりと入ってしまうため、注意が必要です。

「愛の詩集」函の背の書影です。
写真左より
「愛の詩集」感情詩社刊のオリジナル
「愛の詩集」冬至書房刊の復原版
「愛の詩集」日本近代文学館社刊(ほるぷ出版)復刻版

上記Ⅲに記載の通り、オリジナルに比較して冬至書房刊の復原版は高さ(縦)のサイズが小さいのがわかります。
また、背の文字の位置も敢えて変えているようです。さらに、写真ではわかりませんが、復原版の方が薄手の厚紙で作られており、薄っぺらな感じがあります。
一方で、日本近代文学館社刊(ほるぷ出版)復刻版はほぼオリジナルと同様に造られています。


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