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寂しき都会 |
この「寂しき都会」について「室生犀星全詩集」(昭和三十七年三月十日 筑摩書房刊)の巻末の「解説」で犀星自身が、以下のように記しています。
「殆んどが長篇詩を以つて編集され、そのため短かい詩に美しさが潜むといふことが、わすられてゐる。小説の仕事をかたはらに詩つてゐるため散文風な怠慢にながれ、そのため各篇ごとに則行を行つた。抹殺した詩の数は本詩集では三十篇の多きに亘つた。詩は絶え間なく削られ、その最後には一行ものこさずに白紙に戻すといふことも、詩の行き着いたところではあり得るものである。これら三十篇の抹殺はいかなる著書にも集編せず、埋没することにした。或る時期には心にもないことを書き、それが後年には読むにたへない緩寛を覚えて取り捨てることがあるが、私はこれら詩の残骸に些かも躊躇なく割愛することにした。これらの整理は永い間その機会を狙つてゐたものだが、忙殺の生活にその必要な生前の仕事が今日まで延々してゐたものである。」
函欠けであれば比較的市場に多く流通しています。但し、状態の良いものは少ないようです。やはりこの一冊も装幀は、恩地孝四郎による秀逸なものです。
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寂しき都会(初版)函 *1
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寂しき都会(初版)本
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寂しき都会(初版)奥附
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寂しき都会(初版)中扉
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寂しき都会(初版)函絵 |
愛の詩集(再版)の巻末に掲載された「寂しき都会」の広告
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室生犀星記念館で販売されています「装幀の美 恩地孝四郎と犀星の饗宴」では、「寂しき都会」のところに誤って「香炉を盗む」の表紙が紹介されています。非常に良い意匠だけに残念。
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寂しき都会(初版)恩地孝四郎による扉絵
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寂しき都会(初版)函絵
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「例言」として、犀星は
「寂しき都会」は「愛の詩集」の第三篇であり、さうして本集をもって完結するわけである。特にさういふ断り書きかなくてもいいのであるが、さういう風にも見られるといふことを示すために、ここに書きそへることにした。
と書いています。
「第二愛の詩集」(大正8年5月5日発行)の巻末広告では、「愛の詩集第三篇」として予告されていました。
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「第二愛の詩集」(大正8年5月5日発行)の巻頭で犀星は、
「愛の詩集は同じ著者によりて順次刊行せられるものにして、たとへば第三篇をもって打切りとするものなり。」と書いています。
左は「第二愛の詩集」巻末の広告です。
ここでは「愛の詩集第三篇」近刊 1920年(大正9年)と紹介されています。
まさに、これがこの「寂しき都会」のようです。
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