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「兄いもうと」紹介

「兄いもうと」の映画、ドラマ、舞台化について
犀星のベストセラー小説「あにいもうと」が大泉洋&宮﨑あおいでドラマ化されTBS系列で、2018年6月25日(月)20:00~22:00に放送されました
http://www.tbs.co.jp/aniimouto/
これまでも「あにいもうと」は3度映画化され、その他にもテレビドラマや舞台公演としても数多く公開されています。
書籍としては、初版が昭和10年1月28日に「神々のへど」として山本書店から出版されましたが、その後「兄いもうと」に改題され、普及版、廉価版、決定版と数多くの版、刷が出版されています。
【映画】
1936年(昭和11年)「兄いもうと」木村荘十二監督
1953年(昭和28年)「あに・いもうと」成瀬巳喜男監督
1976年(昭和51年)「あにいもうと」今井 正監督
【テレビドラマ】
1958年(昭和33年)「兄いもうと」TBS
1959年(昭和34年)「あにいもうと」日本テレビ
1960年(昭和35年)「兄いもうと」テレビ朝日
1960年(昭和35年)「あにいもうと」フジテレビ
1972年(昭和47年)「あにいもうと」TBS
1995年(平成07年)「あにいもうと」テレビ東京
2018年(平成30年)「あにいもうと」TBS 6月25日放映
【舞台公演】
昭和10年11月「兄いもうと」東京有楽座劇場 芸術座
昭和11年04月「兄いもうと」宝塚中劇場 芸術座
昭和11年10月「兄いもうと」大阪中座 大合同劇
昭和12年11月「兄いもうと」新宿第一劇場 芸術座水谷一座
昭和16年06月「兄いもうと」大阪歌舞伎座 井上正夫演劇道場 水谷八重子芸術座合同
昭和17年02月「兄いもうと」東京明治座 井上正夫演劇道場 水谷八重子芸術座合同
昭和17年12月「兄いもうと」大阪角座 厚生劇
昭和23年08月「兄いもうと」東京劇場 新生新派、水谷八重子合同
昭和23年11月「兄いもうと」名古屋御園座 合同新派祭
昭和24年12月「兄いもうと」大阪歌舞伎座 水谷八重子他
昭和26年04月「兄いもうと」浜町明治座 春の新派祭、水谷八重子他
昭和27年02月「兄いもうと」大阪歌舞伎座 全新派合同
昭和29年12月「兄いもうと」新橋演舞場 新派大合同
昭和31年04月「兄いもうと」東京明治座 春の新派祭
昭和31年07月「兄いもうと」渋谷東横ホール 新派東横公演
昭和38年04月「兄いもうと」東京明治座 春の新派祭
昭和40年05月「兄いもうと」新橋演舞場 新派
昭和41年02月「兄いもうと」東京歌舞伎座 歌舞伎、新派合同特別公演
昭和51年05月「兄いもうと」新橋演舞場 新派特別公演
昭和52年04月「兄いもうと」名古屋中日劇場 陽春特別公演
昭和58年01月「兄いもうと」三越ロイヤル・シアター 劇団新派新春公演
昭和62年12月「兄いもうと」国立劇場 新派百年記念公演 水谷良重他

「有楽座十一月興行脚本解説」(写真:上)*1
東京宝塚劇場刊
昭和10年11月1日発行
「兄いもうと」の有楽座での舞台公演にあたり、以下のように記載されています。
「現文壇の一異彩として、独自な作風を示しつ、絶えざる活躍をつづけられている詩人室生犀星氏が、鋭い性格解剖のメスを揮ってものされた、最近の佳作「兄いもうと」を、今回、新興演劇の殿堂有楽座十一月興行に初出演する芸術座が脚色上演することとなりましたのは、昭和十年の晩秋劇界を飾るに適しい意義のあることだと存じます。」
脚色演出 金子洋文
配役もん 水谷八重子
  伊之 村田正雄

この「有楽座十一月興行脚本解説」では、水谷八重子が演ずる主人公もんの恋人の名前が「子畑」として配役やあらすじで紹介されています。原作の「あにいもうと」や脚本の中では「小畑」とされているのですが。

「有楽座十一月興行『水谷八重子有楽座初公演』案内葉書」*1


「新演劇 昭和10年12月号」(写真:中)
演劇研究社刊
昭和10年12月1日発行
その上演脚本が掲載されています。
編輯後記には、「戯曲欄は『文藝賞』の室生犀星作品を金子洋文が脚色し有楽座に於いて水谷八重子等が演じて大成功を収めた『兄いもうと』の一篇丈けであるが、本年棹尾の問題劇であったから味読を乞う」との意味深な記載があります。

その脚本が掲載された「金子洋文作品集(一)(二)」*1です。(写真:下)
株式会社筑摩書房刊
昭和51年11月1日初版発行
(二)p.101に「兄いもうと」の脚本が掲載されています。
(水谷八重子有楽座上演昭和十年十一月)との記載があります。

セリフを含め細かいところでは多くの差異があるようです。実際にどちらが実際の舞台で使われたのか、興味深いところです。







「藝 ゆめ いのち」水谷八重子 著*1
白水社刊
昭和31年12月20日発行 函

女優 水谷八重子さんの随筆「義兄の死の前後」の中で、有楽座での舞台公演に関して以下のように書かれています。
「十一月の有楽座公演は芸術座単独ですから大へんです。と申すのは東宝系出演のときはレパートリーはこちらの案でいくのですから、いろいろの作家の方たちにテをうたねばなりません。ようやくのことで巌谷三一さんの「新東京見物」室生犀星先生の原作を脚色した金子洋文さんの「兄いもうと」「俠艶録」を決定しました。このときの「兄いもうと」などは、ちょうど演舞場の中日すぎの夜だったと思いますが、私が義兄のお墓参りをかねて熱海の家にでかけようと、東京駅についたとき、金子洋文さんが脚本をもってかけつけて下すったものです。」

「兄いもうと」日本映画傑作全集 VHSビデオ モノクロ61分
東宝映画株式会社
昭和11年度作品
「愛し合うゆえに激しく衝突する兄妹、室生犀星文学を完璧に映像化した文芸佳作」と記載されています。

原作:室生犀星
監督:木村荘十二
脚色:江口又吉
配役 もん 竹久千恵子
   伊之 丸山定夫

「映画評論」昭和11年5月号
トオキイ・シナリオ研究
昭和11年5月1日発行
トオキイ・シナリオとして犀星原作の映画「兄いもうと」が取り上げられています。



ドウトンボリ(大阪)中座(昭和11年)十月興行*1
「井上正夫、水谷八重子大合同劇」
松竹興行株式会社大阪支店発行
昭和11年10月1日出版
「兄いもうと」の配役やあらすじが紹介されています。

室生犀星原作(文藝懇話會受賞作品)
金子洋文脚色並舞台監督
配役もん 水谷八重子
  伊之 村田正雄

大阪歌舞伎座(昭和16年)六月興行*1
「井上正夫演劇道場、水谷八重子藝術座合同劇」
松竹興行株式会社大阪支店発行
昭和16年6月1日出版
「兄いもうと」の配役やあらすじが紹介されています。

「荒みうらぶれた生活をおくる兄と妹にも涙の愛情ほとばしる。香気鮮烈なる物語は好配役を得てひらく」と紹介されています。
室生犀星原作(文藝懇話會受賞作品)
金子洋文脚色並演出
配役もん 水谷八重子
  伊之 山口俊雄

東京劇場(昭和23年)八月興行*1
「新生新派、水谷八重子合同公演」
松竹出版部発行
昭和23年8月1日出版
「兄いもうと」の配役やあらすじが紹介されています。

室生犀星原作
金子洋文脚色
大江良太郎演出
配役もん 水谷八重子
  伊之 大矢市次郎


劇場情報誌「東劇グラフ15」
東京劇場宣伝部発行
昭和23年8月5日出版
「兄いもうと」の配役やあらすじ、舞台写真が紹介されています。

名古屋御園座(昭和23年)十一月興行*1
「新生新派大合同、十一月特別興行新派祭」
御園座宣伝部発行
昭和23年11月1日出版
「兄いもうと」の配役やあらすじ、舞台写真が紹介されています。

室生犀星原作
金子洋文脚色
大江良太郎演出
配役もん 水谷八重子
  伊之 大矢市次郎


大阪歌舞伎座(昭和24年)十二月興行*1
「新旧最高メンバー師走大顔合興行」
千日土地建物株式会社発行
昭和24年12月3日出版
「兄いもうと」の配役やあらすじが紹介されています。

室生犀星原作
金子洋文脚色
大江良太郎演出
配役もん 水谷八重子
  伊之 大矢市次郎

映画 「あに・いもうと」DVD
(第2回目となる映画化)
昭和28年公開、平成17年5月27日
特典:フォトギャラリー、宣伝物ギャラリー
監督 成瀬巳喜男
配役 もん 京マチ子
   伊之 森雅之

付録として映画のシーンをポストカードにしたものが、3枚附いていました。
先日、このDVDの写真を含む映画宣伝用の写真を8枚ヤフオクで落札、入手しました。「映画は大映 あに・いもうと」との記載があります。著作権の関係で掲載できませんが。

映画 「あに・いもうと」DVD
昭和28年公開、平成17年出版
中国語字幕版
中国上海で購入したものです。異国の地でこれを見つけたときは驚きでした。

監督 成瀬巳喜男
配役 もん 京マチ子
   伊之 森雅之

映画 「あに・いもうと」LD
DAIEI CLASSIC SELECTION
発売元:大映株式会社
1953年8月19日封切り
監督 成瀬巳喜男
脚本 水木洋子
配役 もん  京マチ子
   伊之吉 森雅之

「四月興行 春の新派祭 明治座」*1
発売元:都宣傳株式会社
昭和26年4月1日発行
「兄いもうと」のあらすじと金子洋文氏の『「兄いもうと」について』や舞台写真が掲載されています。

脚色並演出  金子洋文
配役 もん  水谷八重子
   伊之吉 伊志井 寛

浜町 明治座「春の新派祭」プログラム*1
発売元:都宣傳株式会社
昭和26年4月1日発行
「文藝懇話会賞に輝く名作、水谷八重子当たり芸の内」と紹介されています。

脚色並演出  金子洋文
配役 もん  水谷八重子
   伊之吉 伊志井 寛

新橋演舞場「十二月 新派」大合同パンフレット*1
昭和29年12月7日発行
十二月興行の昼の部第二として「兄いもうと」が上演されており、その内容が写真付きで紹介されています。
兄 伊之は、伊志井 寛、妹 おもんは、水谷八重子が演じています。また、室生犀星の「『あに・いもうと』について」が掲載されています。以下がその全文です。

「あに・いもうと」について 室生犀星
 作家といふものは思ひがけない作品が、世評にのぼり好調をおびる時がある。この「あにいもうと」の場合も、作者はそれほどでもない作品だったのに、映画演劇に上演されたりしていて、作者の私に面映ゆい気持を経験させてゐる。「あにいもうと」にある兄妹の愛情といふものが瞬間的には人間としての嫉妬や、にくしみをも交へてもゐるところに、やみがたい人間の悲しみもあるわけである。兄の伊之のやくざな生活の立直りも、妹へのおもひやりも少しづっではあるが、人間の良質を築かうとしてゐる。妹もんのひたむきな熱情が最後に盛り返してくるところは、女性といふものの凄まじさが、決して、うはべだけでは見破られないものであることを、作者はねらって見たものである。
 どれだけよごれた生活の中でも、人間にはすくひがある筈である。「あにいもうと」にあるすくひが世評を浴びていることで、私はつねに作者としてがうあらねばならないと思ふのだが、何時もすくひを突破してゐる作者としては益々面映ゆいものがあり、世評に数へられるところが多いと云ってもよいのである。


驚いたことに、この件が既に「新資料」として掲載されていました。
「室生犀星研究 第31輯」
新資料 犀星原作「あにいもうと」から 金子洋文脚色・演出「兄いもうと」へ(須田久美著)

「四月興行 春の新派祭 明治座」
発売元:都宣傳株式会社
昭和31年4月4日発行
「新派 年表」(昭和53年10月1日発行、大手町出版社)では、演目として「兄いもうと」との記載がありますが、このパンフレットを入手して確認したところ、「兄いもうと」は入っていませんでした。
演目
<昼の部>
片恋
長崎「こしま町」
明治一代女


渋谷東横ホール「新派東横公演」
発売元:記載なし(東横ホール)
昭和31年7月4日発行(初日)
舞台写真、作品の紹介(「観劇の栞 第二部」)、シナリオが掲載されています。もんは、京塚昌子さんが演じています。

脚色・演出  金子洋文
配役 もん  京塚昌子
   伊之  花柳喜章
   赤座  伊井友三郎
   りき  明石光代
   さん  加藤和恵

 

東京明治座「春の新派祭」再開場五周年記念*1
発売元:株式会社明治座
昭和38年4月4日発行

脚色・演出  金子洋文
配役 もん  水谷八重子
   伊之  森 雅之
   赤座  伊井友三郎
   りき  一条久枝
   さん  光本幸子

 

TBSテレビ 東芝日曜劇場 第821回「あにいもうと」決定稿(台本)*1
昭和47年8月26,27日撮影、9月3日放映
室生犀星 原作 山田洋次 脚本
<配役>
伊之助 渥美 清
も ん 倍賞千恵子
との豪華な配役になっています。

その下は、実際にTBSテレビで放映されたものを「TBS日曜劇場傑作選」としてDVD化したものです。
あらすじとして、
「伊之助(渥美清)と、もん(倍賞千恵子)は仲の良い兄妹だったが、もんが男に捨てられて帰ってきて以来、兄妹喧嘩が絶えなかった。もんは家を出て水商売をはじめ、伊之助はもんをかばうために悪態をつく。そんなある日、かつて、もんを捨てた男が謝りたいと訪ねてきて…」と紹介されています。

歌舞伎座「歌舞伎、新派合同二月特別公演」*1
発売元:松竹株式会社演劇部
昭和41年2月1日発行
あらすじや舞台写真が掲載されています。

原作     室生犀星
脚色・演出  金子洋文
配役 もん  水谷良重
   伊之  勘 弥
   赤座  好太郎
   りき  一条久枝
   さん  光本幸子

新橋演舞場「5月新派特別公演」*1
発売元:新橋演舞場
昭和51年5月3日発行

原作     室生犀星
脚色・演出  金子洋文
配役 もん  水谷良重
   伊之  菅原謙次
   赤座  島 章
   りき  一条久枝
   さん  佐野布美子

新橋演舞場上演台本「兄いもうと」*1
昭和51年5月
室生犀星原作 金子洋文脚色・演出
この台本は「伊之」役が実際に使っていたもののようで、セリフの書き込みなどがあります。
配役については記載がありませんでしたが、上のパンフレットから、菅原謙次氏の旧所蔵だったことがわかりました。

「シナリオ」1976年9月号
発行元:シナリオ作家協会
昭和51年9月1日発行
「あにいもうと」の水木洋子脚色のシナリオが掲載されています。その他にも、映画評論家 佐藤忠男氏の「悪態文化について」
- 「あにいもうと」から - が掲載されています。

「あにいもうと」映画パンフレット
昭和51年に監督 今井 正、脚本 水木洋子で制作された映画「あにいもうと」のパンフレット
(第3回目となる映画化)
<キャスト>
伊之助 草刈正雄
も ん 秋吉久美子

映画「あにいもうと」台本 決定稿2*1
株式会社 東宝映画
昭和51年(1976年)6月2日
脚本 水木洋子
監督 今井 正

中日劇場「陽春特別公演」*1
名古屋中日劇場
「兄いもうと」
昭和52年4月2日発行
あらすじや舞台写真等が掲載されています。
原作     室生犀星
脚色・演出  金子洋文
演出     永井孝男
配役 もん  水谷良重
   伊之  菅原謙次
   赤座  島 章
   りき  一条久枝
   さん  佐野布美子

劇団新派新春公演*1
三越ロイヤル・シアター
「兄いもうと」一幕
昭和58年1月4日発行
あらすじや舞台写真が掲載されています。
室生犀星 原作 金子洋文 脚色・演出
吉村忠矩 演出
<キャスト>
も ん 水谷良重
伊 之 菅原謙次

新派百年記念「国立劇場十二月新派公演」*1
「兄いもうと」一幕
昭和62年12月3日発行

「兄いもうと」に関連し以下の内容が掲載されています。
【資料展示室】
犀星の写真や初出誌の「文藝春秋」(昭和9年7月号)、映画「あにいもうと」のスチール写真など。
【思い出の舞台】
昭和12年11月の新宿第一劇場の水谷八重子のもん、昭和26年4月明治座、昭和38年4月明治座などの舞台写真が掲載されています。
【配役一覧】
このパンフレットに配役が記載されていました。水谷良重さんがもんを演じています。
【その他】
「あにいもうと」についてとして室生朝子氏が書いています。

新派百年記念
国立劇場新派公演上演台本*1
「兄いもうと」一幕
昭和62年12月
室生犀星原作 金子洋文脚色・演出
残念ながら、配役の記載はありませんでしたが、ネットで調べたところ以下のような配役のようです。
も ん 水谷良重
伊 之 菅原謙次

TBSテレビ ドラマ特別企画「あにいもうと」台本(決定稿)
2018年6月25日放映
山田洋次 脚色、石井ふく子 プロデュース、清弘 誠 演出
<キャスト>
も ん 宮﨑あおい
伊 之 大泉 洋
TBSテレビ紹介ページ http://www.tbs.co.jp/aniimouto/

参考文献
「犀星雑記」(林土岐男著) 「映画『兄いもうと』その他」
「室生犀星寸描」(大森盛和、葉山修平編著)
 ・「あにいもうと」について(瀬川佳子著)
 ・「単行本『神々のへど』と『兄いもうと』(須田久美著)
「室生犀星研究 第31輯」
新資料 犀星原作「あにいもうと」から 金子洋文脚色・演出「兄いもうと」へ(須田久美著)

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