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昭和10年~神々のへど(兄いもうと)
「神々のへど」はその後「兄いもうと」と改題されました。「兄いもうと」は、昭和11年に「あにいもうと」として映画化されたベストセラー小説です。その後、昭和28年、昭和51年にも映画化されています。そのため多くの別版や文庫本が出版されています。
このあたりは、「室生犀星研究」第9輯に収録されています「『神々のへど』から『兄いもうと』までを見る」(須田久美著)で詳しく紹介されています。
また、その内容は「室生犀星寸描」(大森盛和、葉山修平編著)に「単行本『神々のへど』と『兄いもうと』」(須田久美著)」としても収録されています。

神々のへど
山本書店刊
昭和10年1月28日発行 新菊判 函
国立国会図書館デジタルコレクション http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1209009
参考価格 15,000 ~ 30,000
入手困難度 ★★★
非常に人気の高い本で、市場価格も比較的高価です。
神々のへど(初版)函 *1
神々のへど(初版)本
神々のへど(初版)奥附

この本の題字について季刊「銀花」1977年第29号【春】で、長女の朝子氏が「犀星・本・庭」の中で「『神々のへど』という短篇集は、十歳の弟(朝子氏と3歳違いの朝巳氏)が書いた題字である。弟に習字の練習のようにして書かせたのであろうか。弟は自分の幼ない字が父の書物の題名になっていることを、大人になってから知ったのである。母は達筆な人であったが、いわゆる習い重ねた女文字を父は好まなかったのではないか。むしろどこかぎこちない幼ない字の方が、父の本をひとしお立派に見せている。」と書いています。
この文藝春秋(昭和9年7月号)に、「創作」の一つとして犀星の小説「あにいもうと」が掲載されました。(p.358~p.371)
この「あにいもうと」が、昭和11年に映画化、ベストセラー小説となったことから、小説集「神々のへど」の本のタイトルが、この「あにいもうと」に改題されています。

この文藝春秋(昭和9年11月号)には、創作として小説「神々のへど」が掲載されています。(p.374~p.390)
短編集「神々のへど」は、最初この小説の題名を本のタイトルとしていました。
また、小説の最後には、「ーーあにいもうと続篇として」との記載があります。

神々のへど 限定50部本
山本書店刊
昭和10年1月28日発行 新菊判 函
参考価格 150,000 ~ 200,000
入手困難度 ★★★
室生犀星の署名入り限定50部本です。限定50部と少ない発行部数ですが、市場には常に流通しています。
神々のへど
(限定50部本)函 *1
神々のへど
(限定50部本)本
神々のへど
(限定50部本)奥附

兄いもうと(神々のへど改題)再版普及版
山本書店刊
昭和10年9月5日発行 四六判 カバー装、帯
国立国会図書館デジタルコレクション http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1173515
参考価格 1,000 ~ 2,000
入手困難度 ★★
「神々のへど」から「兄いもうと」に改題されました。奥附には、「神々のへど再版普及版」と記載されています。この再版普及版は、第7版まで発行されています。
昭和10年09月05日発行 再版普及版
昭和10年09月12日発行 四版普及版
昭和11年01月17日発行 七版普及版
先日帯附きがヤフオクに出品されており、帯には大きく「文藝懇話会賞受賞作品」との記載がされていました。
兄いもうと 普及版 本
兄いもうと 普及版 中扉
兄いもうと 普及版 奥附

左は、四版普及版の貴重な帯附きです。
表には大きく「文藝懇話会賞受賞作品」と書かれています。裏面には正宗白鳥氏の推薦文が記載されています。
調べたところ、文藝懇話会賞は、創作(小説・戯曲など)、評論、翻訳に対し、その年度の優秀な作品を表彰するもので、その第1回として昭和10年7月17日に横光利一氏の『紋章』と同時に犀星は「あにいもうと」で受賞しています。

http://prizesworld.com/prizes/novel/cnwk.htm
未確認ですが、時期的には再版普及版から帯が附いていた可能性があります。

兄いもうと(神々のへど改題)廉価版
山本書店刊
昭和11年7月20日発行 四六判 カバー装
国立国会図書館デジタルコレクション http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1028747
参考価格 1,000 ~1,500
入手困難度 ★★★
その後、8版、9版として廉価版も出版されました。普及版が1円に対して80銭で販売されています。
表紙の写真は昭和11年6月に映画化された「兄いもうと」の1カットです。
昭和11年7月20日発行 八版改装廉価版
昭和11年7月21日発行 九版改装廉価版
兄いもうと 廉価版 本 *1
兄いもうと 廉価版 中扉
兄いもうと 廉価版 奥附

左は、九版改装廉価版の貴重な帯附きです。
表には「文藝懇話会賞受賞作品の他に、文壇の全視聴を集めている問題の名作 劇に映画に壓倒的好評! 文藝愛好者必読の書!」
と書かれています。裏面には正宗白鳥氏の推薦文が記載されています。
調べたところ、文藝懇話会賞は、創作(小説・戯曲など)、評論、翻訳に対し、その年度の優秀な作品を表彰するもので、その第1回として昭和10年7月17日に横光利一氏の『紋章』と同時に犀星は「あにいもうと」で受賞しています。

http://prizesworld.com/prizes/novel/cnwk.htm
未確認ですが、時期的には八版改装廉価版から帯が附いていた可能性があります。

兄いもうと(神々のへどの改題)決定版
山本書店刊
昭和14年6月1日発行 四六判 函/カバー
国立国会図書館デジタルコレクション http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1173144
参考価格 15,000 ~ 30,000(函欠 2,500 ~ 4,000)
入手困難度 ★★★★
ベストセラーとなり決定版(上製本)として発行されています。函入りとカーバ装の2種類が市場に流通しています。赤い函が、意外性があり印象的な1冊です。
この1冊について、非常に不思議なことがあります。その多くが裸本で流通しているのです。理由はわかっていません。一方で、函附は、比較的高価格になっています。
兄いもうと(決定版)函 *1
兄いもうと(決定版)本
兄いもうと(決定版)
奥附

貴重なカバー装の決定版です。本、奥附に違いはなく大人しいカバーが附いています。
兄いもうと(決定版)カバー
兄いもうと(決定版)本
兄いもうと(決定版)
奥附

貴重なカバー装版のカバーです。
状態は良くありませんが、表紙には「室生犀星作品集」、背には「兄いもうと」、「室生犀星 著」との記載があります。

兄いもうと(神々のへどの改題)特製限定20部本
山本書店刊
昭和14年6月1日発行 四六判 函、帯、俳句入り
参考価格 200,000 ~ 300,000
入手困難度 ★★★★★
特製限定本として20部のみ作成された貴重な本です。
但し奥附を見ると番外本のようです。
兄いもうと
(特製限定20部本)本 *1
兄いもうと
(特製限定20部本)署名
兄いもうと
(特製限定20部本)奥附

あにいもうと 新潮文庫版*
新潮社刊
昭和13年1月17日発行 文庫判
参考価格 1,000 ~ 2,000
入手困難度 ★★★
単行本に未収録の短篇を含んだ初出誌です。この新潮文庫版と文潮選書版、角川文庫版では、表題をひらがなの「あにいもうと」としています。この後に出版された決定版や春陽堂文庫版では、また「兄いもうと」としています。
あにいもうと(新潮文庫版)
表紙
あにいもうと(新潮文庫版)
裏表紙
あにいもうと(新潮文庫版)
初版奥附

あにいもうと(新潮文庫版)第47版
左の書影は、昭和16年4月30日発行の第47版です。本の幅が初版に比べると約10mmほど小さくなっており、高さ164mm×幅105mmとなっています。
それ以外にも、巻末に犀星の「後記」が追加されています。
その中では、
『私の作品で映画化されたものも「あにいもうと」(昭和九年七月号、文芸春秋)が最初であり、水谷八重子女子によって繰り返し劇にものぼったのもこの「あにいもうと」である。それから「文芸懇話会賞」をうけたのも「あにいもうと」であれば、いささか一般的な読者に名前を知られたのも「あにいもうと」である。(略)』とのこの作品に対する思いが書かれています。
この帯には書店が陳列と整理のために利用すると便利という旨の記載があります。帯の42という番号は発注のための整理番号で、新潮文庫としては第二百六十八編となります。

あにいもうと 文潮選書(3)
文潮社刊
昭和22年12月1日発行 文庫判(小型)
参考価格 500 ~ 1,000
入手困難度 ★★★

あにいもうと 文潮選書(3)
表紙
あにいもうと 文潮選書(3)
挿入写真
あにいもうと 文潮選書(3)
奥附

あにいもうと 文潮選書(3) 再版
文潮社刊
昭和24年1月25日発行 文庫判(小型)
参考価格 400 ~ 800
入手困難度 ★★★
珍しい文潮選書版の再版です。装幀が大きく変更されています。挿入写真は初版と同じものが使われていました。
あにいもうと 文潮選書(3)
再版 表紙
あにいもうと 文潮選書(3)
再版 裏表紙
あにいもうと 文潮選書(3)
再版 奥附

兄いもうと・女の図 春陽堂文庫 ※1
春陽堂刊
昭和24年11月15日発行 文庫判
参考価格 1,000 ~ 1,500
入手困難度 ★★
表題の通り「兄いもうと」(文中はあにいもうと)と「女の図」が収録されています。
兄いもうと・女の図
表紙
兄いもうと・女の図
裏表紙
兄いもうと・女の図
奥附

あにいもうと・山吹 角川文庫647 ※1
角川書店刊
昭和28年5月25日発行 文庫版
参考価格 1,000 ~ 2,000
入手困難度 ★★

あにいもうと・山吹 表紙
あにいもうと・山吹 中扉
あにいもうと・山吹 奥附


あにいもうと 角川文庫
角川書店刊
昭和51年9月30日発行 文庫版、カバー、帯
参考価格 500 ~ 1,000
入手困難度 ★★
昭和51年に今井 正監督で映画化された際の1カットが表紙に使われています。結城信一著の「解説」が巻末に掲載されています。
あにいもうと・山吹 表紙
あにいもうと・山吹 中扉
あにいもうと・山吹 奥附


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