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大正14~15年に出版された著書

翡翠(ひすい)
童話集

翡翠(ヒスイ)
宝文館刊
大正14年3月30日発行 四六判 函
装幀 広川松太郎

国立国会図書館デジタルコレクション http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1016953
参考価格 30,000 ~ 40,000
入手困難度 ★★★★★
表紙のカワセミの絵が非常に綺麗な童話集。函付は非常に貴重です。
翡翠は、カワセミ、ヒスイのどちらでも読めますが、国立国会図書館デジタルコレクションでは、「ヒスイ」と表記されているため、ここでも「ヒスイ」としています。
翡翠(ヒスイ)函 *1
翡翠(ヒスイ)本
翡翠(ヒスイ)奥附

「翡翠(ヒスイ)」函裏面の写影
函には、児童書らしい絵が書かれています。一方で、本表紙には写実的な「翡翠(カワセミ)」の絵が書かれています。犀星最初の児童書です。先日まで作者不詳としていましたが、「室生犀星研究」第32輯に掲載されています「翡翠と犀星」(林 土岐男著)に、「この装丁、口絵、挿絵などをよく見てみると、(HIRO)というサインがある。これは広川の広の略字である。」との記載があり、さらに「この本の装丁、挿絵などはすべて広川松太郎の手になっている。」と書かれています。
「『翡翠』の表紙〈函は未見〉は、」とも記載されていますが、見つけました。函絵(魚)にも「HIRO」のサインがあることを。ということで、装幀を広川松太郎としました。※

魚眠洞随筆
随筆集(俳句含む)

魚眠洞随筆
発売所 大鎧閣 発行所 新樹社
大正14年6月25日発行 四六判 函
装幀 岸田劉生
国立国会図書館デジタルコレクション http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1021592
参考価格 10,000 ~ 20,000
入手困難度 ★★★★
表紙の岸田劉生の版画が非常に洒落た装幀です。犀星が好んだ装幀の1つで、長女の室生朝子著の「母そはの母」の題字にもこの装幀の趣が取り入れられています。
魚眠洞随筆(初版)本 *1,2
魚眠洞随筆(初版)函
魚眠洞随筆(初版)奥附

魚眠洞随筆(初版)
本表紙絵
魚眠洞随筆(初版)本表紙、背
魚眠洞随筆(初版)
函、背


魚眠洞随筆(再版)
発売所 大鎧閣 発行所 新樹社
大正14年7月25日発行 四六判 函
装幀 岸田劉生
参考価格 8,000 ~ 10,000
入手困難度 ★★
その後、再版が同じ発売所、発行所で出版されています。
この本には、「風骨先生」宛献呈署名があります。犀星の金沢地方裁判所時代の上司の河越風骨氏だと思われます。
魚眠洞随筆(再版)本
魚眠洞随筆(再版)中表紙
魚眠洞随筆(再版)奥附

魚眠洞随筆(再版) 武蔵野書院版
発行所 武蔵野書院
大正14年7月25日発行 四六判 函
装幀 岸田劉生
参考価格 8,000 ~ 10,000
入手困難度 ★★★
再版には、以下の経緯から初版と同様に発行所「新樹社」、発売所「大鎧閣」のものと、訂正紙を貼り付けて発売所を「武蔵野書院」に変更したものの2種類が存在します。また、定価が張り紙で2円80銭から2円30銭に改訂されています。その他は装幀に違いはありません。書影は、発売所が「武蔵野書院」に訂正されたものです。
魚眠洞随筆(再版)本
魚眠洞随筆(再版)函
魚眠洞随筆(再版)奥附

魚眠洞随筆(三版)
武蔵野書院刊
昭和4年3月5日発行 四六判 函
装幀 岸田劉生
参考価格 5,000 ~ 10,000
入手困難度 ★★
その後、三版が同じ武蔵野書院より出版されています。奥附が大きく変わっている以外は、本も函の意匠もほぼ同じです。
魚眠洞随筆(三版)本
魚眠洞随筆(三版)函
魚眠洞随筆(三版)奥附

この「魚眠洞随筆」再版の奥附けには、発行所「武蔵野書院」との訂正紙が貼られています。奥附自体はほぼ初版と類似していることから、元は初版と同じ発行所「新樹社」、発売所「大鎧閣」だったと思われます。
なぜ、このようなことになったのか不思議でしたが、第三版を入手し、巻頭に新たに追加された犀星の「再版序言」を見てその経緯がわかりました。
そこには、
「『魚眠洞随筆』は久しく版行を絶っていたのは、発行元の新樹社主人が物故したためと、僕に閑暇の無かった為である。知友武蔵野主人は大へんこの書に親しみをもって呉(く)れた、
今度その残余の部数に版を加えて、茲(ここ)に新しく世に問う機縁を与えてくれたのは、自分の望むところであった。」との記載がありました。
再版の売れ残りに発行所変更の訂正紙を貼ったものと、第三版として新たに印刷したものを武蔵野が販売したということのようです。これですっきりしました。

季刊「銀花」1977第二十九号春に掲載された室生朝子著の「犀星・本・庭」の中で「(略)私は母の思い出を一冊にまとめた。それは私の第二冊目の書物である。「母そはの母」という題名であるが、父は自分の書物の「魚眠洞随筆」岸田劉生の装幀であるが、背文字をそのまま使うようにと言った。」との記載があります。
実際に比較してみると確かに、趣が似ています。

魚眠洞随筆(初版)本表紙、背
魚眠洞随筆(初版)函、背
室生朝子著「母そはの母」(初版)函背、函

野いばら
詩集
副題に「犀星小曲集」とつけられています。
野いばら
紅玉堂書店刊
大正15年6月5日発行 四六半裁判 函、カバー
国立国会図書館デジタルコレクション 公開なし
参考価格 25,000 ~ 60,000
入手困難度 ★★★★
函付は貴重で、小型本ながら天金染の豪華な造りになっています。ときどき市場にはでてきますが、状態の良いものは比較的高価な価格で取引されています。
野いばら(初版) 本 *1
野いばら(初版) 函
野いばら(初版) 奥附

野いばら(初版) 奥附
奥附に出版社である紅玉堂の振込み番号変更の印が押されています。
野いばら(初版) 奥附
同様に変更の印が押されていますが、印が異なっています。


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