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昭和2~3年に出版された著書

故郷図絵集
詩集

故郷図絵集 普通本
椎之木社刊
昭和2年6月1日発行 四六判 カバー装 薄紙表紙 角背
国立国会図書館デジタルコレクション 公開なし
参考価格 80,000 ~ *150,000
入手困難度 
★★★★★
この普通本(通常版)もカバー附はなかなか市場にはでてきません。以前厚紙表紙の普通本も市場にでており、各種異装本も存在するようです。
冬至書房より近代文芸復刻叢刊として復刻版が出版されています。
冬至書房刊の復刻版との見分け方については、「故郷図絵集の真贋」の頁を参照してください。

この「故郷図絵集」について「室生犀星全詩集」(昭和三十七年三月十日 筑摩書房刊)の巻末の「解説」で犀星自身が、以下のように記しています。
「金沢滞在中の作品。殆んどの毎日が山河の景色に魅了されてゐたため、詩も其処に惹かれて書かれたが、詩集『鶴』の気配ひがここに早くも漂泊してゐる。金沢では冬から冬へと二度の冬を送迎したので、幼年風の印象が深刻であつたのである。詠嘆感激が心に沈みこんで文学といふものが地方にあつては成長しないことが、一つの憂愁になつて私を懸念させてゐたものの、その間に詩だけは絶えず書かれてゐて恙なきを得たのは意外であつた。も一つは幼少の時から見なれた風景のこまかいしがらみは、成長した後にも、ずつと奥の方に生きてゐて、ひとたび、その物に打つかると開くものは開いて包みこんだら、向ふではなさないのである。書体は小冊。」
故郷図絵集 初版(カバー)
故郷図絵集 初版(本)
故郷図絵集 初版(奥附)


故郷図絵集 普通本(試し刷り)
椎之木社刊
昭和2年6月1日発行 四六判 薄紙表紙 角背 カバー
国立国会図書館デジタルコレクション 公開なし
参考価格 50,000 ~ *80,000
入手困難度 
★★★★★
先日、神田の古書店で普通本の「故郷図絵集」と奥附が異なる1冊を入手しました。確認したところ奥附の検印や表記だけでなく、頁構成も異なっていました。
また、収録されています詩「枯木」では、誤字もありました。
「枯木」
向ふ岩の枯木に雪がある
それが水に映って消えない。

      
普通本、特製50部限定本では、
向ふの枯木に雪がある
それが水に映って消えない。
となっており、「室生犀星全詩集」(筑摩書房刊)も同様の表記となっており、続く「水に映って」との表現があることから「向ふ岸」が正しいと思われます。「詩集『故郷図絵集』の謎」の頁でも紹介しましたが、この1冊は校正のための試し刷りのように思われます。
その後、この薄紙カバー附きを入手しました。これまで市場で3冊確認できており、ある程度の数が刷られているようです。誤植、検印も同様でした。
 この薄紙カバーについて普通本と比較したところ、背の題名、著者名のピッチが大きく異なっており、この試し刷り版用に作成されたものということが判りました。

故郷図絵集 初版(カバー)
故郷図絵集 初版(本)
故郷図絵集 初版(奥附)

故郷図絵集 特製50部限定本
椎之木社刊
昭和2年6月1日発行 カバー
参考価格 特製50部限定本 250,000 ~ 300,000(400,000)
入手困難度 
★★★★★
普通本と特製50部限定本があります。
これまでカバー欠けのものを掲載していましたが、先日薄紙カバー附きのものを入手したため、書影を更新しました。薄紙カバー附きは、これまで2冊しか確認できておらず、非常に貴重なものです。
また、この1冊は犀星の毛筆識語、署名入りでした。そこには「竹の幹秋近き日さし辷りけり」の俳句が書かれていました。
「室生犀星文学年譜」室生朝子、本多 浩、星野晃一編(明治書院刊、昭和57年10月20日発行)には、「俳句、署名入」との記載がありますが、これまで確認したものでは、全て「俳句、署名」は、入っていませんでした。今回、俳句、署名入りのものを入手し、確認できたことから一部には俳句、署名入りであることが判明しました。
「室生犀星文学アルバム」(大田区立郷土博物館刊)など多くの参考文献においてもこの布装厚紙表紙のものの書影が掲載されています。
故郷図絵集 特製50部限定本
初版(カバー)
故郷図絵集 特製50部限定本
初版(表紙)
故郷図絵集 特製50部限定本
初版(奥附)

詩集「故郷図絵集」の特製50部限定本のカバー附き、毛筆識語、署名入りの非常に貴重な1冊を入手しました。
 中表紙の上の薄紙に「竹の幹秋近き日さし辷(すべ)りけり」の俳句が書かれていました。これまで入手していましたものには、この薄紙もありませんでした。切り取った跡もないことから、当初から特製50部の中の一部に毛筆識語、署名入用を用意したものと思われます。50部の中の何部が毛筆識語、署名入りなのか非常に気になるところです。
 その他、検印については他の特製50部限定本と同じものが押されていました。

【特製本と通常版の奥附拡大写真】
左の特製本の奥附には、「故郷図絵集」の本の題名とともに「特製本1-50」の記載があります。NO.についての記載はありません。
また、右側の普通本と検印が異なっているのが判ります。

故郷図絵集(復刻) 近代文芸復刻叢刊
冬至書房刊
昭和48年8月20日発行 カバー、別冊解説、十九春詩集、外函
参考価格 1,000 ~ 2,000
入手困難度 ★
室生朝子氏著の「詩の初出について」の栞がついています。「故郷図絵集」と「十九春詩集」の解説が収録されています。オリジナルとこの復刻版とのとの見分け方については、「故郷図絵集の真贋」の頁を参照してください。
故郷図絵集(復刻)カバー
故郷図絵集(復刻)本
故郷図絵集(復刻)奥附

庭を造る人
随筆集(小説他)

庭を造る人
改造社
昭和2年6月18日発行 四六判 函
装幀 岸田劉生
国立国会図書館デジタルコレクション http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1176325
青空文庫 http://www.aozora.gr.jp/cards/001579/card53537.html
参考価格 8,000 ~ 20,000
入手困難度 ★★★
比較的市場に流通しており、容易に入手可能です。
庭を造る人 本 *1
庭を造る人 函
庭を造る人 奥附


庭をつくる人(庭を造る人の別版)
ウェッジ文庫刊
平成21年6月30日発行 文庫判 カバー、帯
販売価格 800
入手困難度
庭を造る人の別版(文庫)です。当時の岸田劉生氏の装幀のイメージで文庫化されています。巻末には久保忠夫氏の解説があります。
庭をつくる人 カバー
庭をつくる人 本
庭をつくる人 奥附


芭蕉襍記(ざっき)初版
随筆、評論集

芭蕉襍記(ざっき)
武蔵野書店
昭和3年5月16日発行 四六判 函
装幀 著者
国立国会図書館デジタルコレクション http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1914578
参考価格 8,000 ~ 20,000
入手困難度 ★★★★
挟み込まれていた室生犀星の名刺から、堀口大學氏の旧蔵書と思われる初版本を3,000円で購入。
名刺には自筆で堀口大學様との記載がされています。
「室生犀星全集別冊1」に掲載の日記において昭和3年7月28日に堀口氏との書籍のやり取りの記載あり、これもその1冊だと思われます。
また、この時代としてはめずらしく再版も出版されています。
芭蕉襍記(初版)本 *1
堀口大學氏の旧蔵書(?)
芭蕉襍記(初版)函
芭蕉襍記(初版)奥附

左は、芭蕉襍記(初版)に添付されていた犀星の名刺です。
犀星はよく著書を知人に配っていたようです。
「室生犀星全集別冊1、2」に掲載されている日記には、ときどき寄贈先の名前がでてきます。
住所は削除してあります。


芭蕉襍記(別版)
三笠書房刊
昭和17年3月10日発行 B6判 カバー
国立国会図書館デジタルコレクション http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1128359
参考価格 1,000 ~ 2,000
入手困難度 ★★

芭蕉襍記(別版)カバー
芭蕉襍記(別版)本
芭蕉襍記(別版)奥附

詩集


素人社書屋刊
昭和3年9月15日発行 四六判 函
装幀 恩地孝四郎
国立国会図書館デジタルコレクション http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1175683
参考価格 40,000 ~ 60,000(限定46部本 200,000)
入手困難度 ★★★★
初版一千部発行されています。その他に特製限定46部本があります。
特製限定46部本が先日ヤフオクに出品されていました。本の装幀は非常に綺麗です。
鶴(初版)函
鶴(初版)本
鶴(初版)奥附

鶴 特製限定46部本
素人社書屋刊
昭和3年9月15日発行 四六判 函、布装厚表紙、毛筆署名入

装幀 恩地孝四郎
参考価格 限定46部本 150,000 ~ 250,000
入手困難度 
★★★★★
珍しい特製限定46部本です。墨署名と奥附に「四十六冊の内第十九」との手書きの書き込みがあります。
その他にも、布装厚表紙となっており特製売価も通常定価二圓に対し三圓と高価です。これまでも何回かヤフオクやインターネット古書店に出品されています。
鶴特製本(初版)函
鶴特製本(初版)本
鶴特製本(初版)奥附

写真左が奥附に手書きで書かれた限定の文面です。
「四十六冊の内第十九」

写真右は、表紙遊び紙に書かれた犀星の墨署名です。

この「鶴」について「室生犀星全詩集」(昭和三十七年三月十日 筑摩書房刊)の巻末の「解説」で犀星自身が、以下のように記しています。
「『鶴』の序文に「自分は巻頭諸作品に於て自分の中に膠着してゐる何物かを蹶破る気持を持ち、それに打つかつて行つたのが最近の私である」と記し、また「本詩集の『山河抄』は震災後(大正十二年十三年)金沢滞留中の詩作になり『故郷図絵集』の中に集編の上、その同系統を全うすべきであつたが、これ又出版の都合上刻愛し、幸、本詩集に編入することを得たのである」と書いてゐる。
 『鶴』では私は些かの立直りを示し、傍ら『故郷図絵集』の故郷への耳をそば立て壮年期にあらためて 聴くべく見るものを捉へようとしてゐた。この二面の鏡は何時も私の用意の中に潜んでゐて、どう処置すべくもなく私のこころに触れてゐる。恰も震災後の日本は 大戦の或る時期の混乱と欠乏が、初めて明治以来の安泰を瞬時に叩き潰して訪づれてゐたからその間の展 望は悉く傷ついてゐたのである。」


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