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室生犀星原作「蜜のあわれ」に関連する作品達 |
【蜜のあわれ】
「蜜のあわれ」は、「新潮」の昭和34年1月号~4月号に連載されました。
映画のポスターやパンフレットには金魚に扮した二階堂ふみが、椅子に横たわり「新潮」(たぶん昭和34年1月1日号だと思われます。)の本を高く掲げて読んでいるシーンが映されています。予告編では、その本が「新潮」であることがはっきりと確認できます。こんなところまでしっかりとこだわっているようです。
「新潮」昭和34年1月号(昭和34年1月1日発行)
「蜜のあはれ」(新連載、「あたいは殺されない」)が掲載されています。
その他に森 茉莉氏の「暗い眼日」や堀多恵子氏の「堀辰雄の思ひ出」などが掲載されています。
まさに、金魚に扮した二階堂ふみが、椅子に横たわり手に持っている本がこの「新潮」昭和34年1月号です。
先日(2021年1月13日)に、2冊目をインターネット古書店で入手しました。非常に状態が良いもので、出版されてから60年以上も経過していますが、表紙に折れや欠けもなくもなく新本のような状態でした。(写真右)
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「新潮」昭和34年2月号(昭和34年2月1日発行)
「蜜のあはれ」(連載第二回「をばさま」p.206~223)が掲載されています。
その他に、三島由紀夫著の「日記」、井上靖著「作家のノート」などが掲載されています。
今回、ヤフオクで落札したのですが、同時期に4月号も出品されていましたが、残念ながら落札することができませんでした。(令和4年3月6日)
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「新潮」昭和34年3月号(昭和34年3月1日発行)
「蜜のあはれ」(連載第三回、「日はみじかく」)が掲載されています。
その他に森 茉莉氏の「私の離婚とその後の日日」や萩原葉子氏の「父・萩原朔太郎」などが掲載されています。
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その後新潮社から単行本として昭和34年10月5日に出版されています。驚くべきは函表紙で、この小説に登場する「金魚」の魚拓が印刷されています。
長篇小説「蜜のあはれ」(旧仮名遣い)
株式会社新潮社刊
初版 昭和34年10月1日印刷、10月5日発行
初版発行部数1万部
四六判 函、帯
装幀 著者、魚拓(炎の金魚)栃折久美子
収録 「蜜のあはれ」、後記「炎の金魚」
出版から50年以上経過していますが、今でもオリジナルを入手することはできます。
残念ながら、今回の映画化の影響でこの本の古書価が高騰しており、数倍程度の価格となっています。
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蜜のあわれ(初版)帯
「帯」附は非常に貴重です。帯には、「人間と化して、女性の妖しさ、美しさのすべてを具現する一匹の金魚! 老作家上山が可愛がっているこの金魚は、彼にとっては娘であり、恋人であり、女のすべてである。美しい女と化す、なまめかしい金魚との対話の中に、男の生き甲斐と女のいのちを探り、独特のエロチシズムをただよわせる問題作。」と書かれています。
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その他に、別版として昭和36年8月20日に株式会社講談社より「ミリオン・ブックス」の1冊として出版されています。この別版では、表紙の金魚は絵となっています。
「蜜のあはれ(別版)」
講談社刊
昭和36年8月20日発行 新書判 カバー
装幀、装画は、堀文子氏で、ミリオン・ブックスの1冊として出版されています 。
この本も市場では、ほとんど見なくなりました。
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【火の魚(ひのうお)】
そして、初版の「蜜のあはれ」の函表紙に掲載するための金魚の魚拓を、装幀家の「栃折久美子」氏に依頼した話を小説化したのが「火の魚(ひのうお)」です。
この「火の魚」は、2009年にNHK広島放送局がドラマ化し、平成21年度(第64回)文化庁芸術祭大賞(テレビ部門・ドラマの部)を受賞しました。その後、全国放送で放映されたため、その原作を読みたいとの人が殺到し単行本は古書店やインターネット上から瞬く間に消えました。
初出は雑誌「群像」昭和34年10月号で、単行本としては昭和35年3月25日に中央公論社より出版されています。
「火の魚」というタイトルに相応しい真紅の函、真っ白な表紙に山口逢春の花の絵というお洒落な装幀となっています。
短編小説集「火の魚」
中央公論社刊
初版 昭和35年3月25日発行
初版発行部数8千部、再版あり
四六判 函、帯
装幀 著者
NHKのドラマの影響があり、全国放送の直前ではヤフオクで1,000円で落札されていましたが、それ以降は非常に高価に取引されています。
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火の魚(初版)帯 状態はあまりよくありませんが、なかなか貴重なものです。 |
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この「火の魚」は、NHK広島放送局がドラマ化し、平成21年度(第64回)文化庁芸術祭大賞(テレビ部門・ドラマの部)、第50回モンテカルロ・テレビ祭のゴールドニンフ賞を受賞しており、その後DVDとして発売されています。
「※本商品は、NHKで2009年に放送されたドラマ「火の魚」を、劇場公開用に音楽および音声を変更して収録したものです。」との記載があります。
NHK
劇場版「火の魚」DVD
販売元 東映株式会社・東映ビデオ株式会社
発行 NHKエンタープライズ
平成24年7月21日出版
販売価格 3,800円(税抜)
COLOR/本編54分/片面1層/1.主音声:ドルビー5.1ch サラウンド 2.副音声 5.1ch サラウンド/日本語字幕/16:9LB
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講談社の文芸文庫「蜜のあわれ・われはうたえどもやぶれかぶれ」には長篇小説「蜜のあはれ」と短篇小説「火の魚」等が収録されており、2つの原作を手軽に読むことができます。
また、巻末には「作家案内-室生犀星」(本多 浩著)として犀星の生い立ちから収録されている作品についての説明があります。ここには、初版の表紙も写真で紹介されています。
さらに収録されている「著書目録-室生犀星」(室生朝子著)の中で、犀星の著書についても紹介されています。
「蜜のあわれ・われはうたえどもやぶれかぶれ」 講談社刊 文芸文庫
初版 平成5年5月10日発行
文庫判 カバー
販売価格 1,134円(税抜)
右の写影は、第20刷で、帯にはNHKでドラマ化された「火の魚」について記載されています。
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【15年目のエンマ帖】
この「15年目のエンマ帖」には、その八として著者の臼井吉見氏の東京女子大の教え子である「筑摩書房の栃折久美子さん」が描かれています。その中で、室生犀星の作品集「火の魚」が取り上げられており、「蜜のあはれ」の函表紙の金魚の魚拓を依頼された「折見とち子」ならぬ「栃折久美子」について語られています。
「15年目のエンマ帖」
臼井吉見 著
中央公論社刊 カバー、帯
昭和36年9月30日発行
帯には「東京女子大の先生だった臼井吉見氏が、現在事業家、芸術家、作家夫人、学者と社会の各方面で活躍しているかつての教え子たちの生き方を追求した異色ある戦後女性史」と紹介されています。
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【製本工房から】
この「製本工房から」には、犀星から小説「蜜のあはれ」の表紙に使うため、装幀家でこの本の著者である「栃折久美子」氏に金魚の魚拓を依頼した話「室生犀星と私」が収録されています。
新潮社版の「蜜のあはれ」の中扉には、
魚拓「炎の金魚」 栃折久美子 と紹介されています。
「室生犀星と私」の「炎の金魚」は、「金魚の魚拓を一枚作ってくれませんか」とのショッキングな書き出しで始まっています。
「製本工房から」 栃折 久美子 著 冬樹社刊 カバー、帯
昭和53年6月20日発行
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【美しい書物】
「室生犀星と私」の「炎の金魚」は、その後、栃折久美子氏の新しい随筆集「美しい書物」に再録されています。
大人の本棚「美しい書物」
栃折久美子 著
みすず書房刊 カバー、帯
平成23年12月8日発行
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【装丁ノート 製本工房から】
別の「製本工房から」が、集英社文庫から出版されていますが、収録内容は異なっています。
残念ながら「室生犀星と私」は収録されていませんが、室生犀星の最後の全詩集「室生犀星全詩集」(筑摩書房刊)の装幀を担当したとの話や「火の魚」についても言及されています。
「装丁ノート 製本工房から」
栃折久美子 著
集英社刊 カバー、帯
平成3年1月25日
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【楽屋の窓から】
女優「宮城まり子」さんが、自身の随筆集の中の「白い帽子」で女優の「高峰秀子」さんから「まり子がやるといい小説、ある」と犀星の「蜜のあわれ」を紹介された話が書かれています。
また、この中で「宮城まり子」さんは「『私、とてもやってみたい』そう思った。」と書いています。さらに、「別の女優さんがテレビで『蜜のあわれ』をやってしまい」との興味深い話も。
また、この装幀、なにげに「栃折久美子」氏の「製本工房から」に似ていると思いませんか。見つけました。目次の裏に「装幀=栃折久美子」との文字を。これも驚きです。
「楽屋の窓から」
宮城まり子 著
講談社刊 カバー、帯
昭和49年11月20日発行
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映画「蜜のあわれ」の関連資料です。
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映画「蜜のあわれ」の映画館で販売されているパンフレット(左)
とメディア向けに配布されたプレスシート(右)です。
同じデザインですが、それぞれサイズがA4、B5と違いがあります。
パンフレットは、648円(税別)で映画館で販売されています。
プレスシートは非売品です。
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