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性に眼覚める頃

室生犀星最初の短編小説集として、今も人気のある作品です。やはり多くの別版が出版されており、近年では漫画でも出版されています。
瀧田樗陰氏が所有していましたオリジナル原稿が金沢の室生犀星記念館で公開され、当初題名が「発生時代」であったことを改めて知ることができました。
このことに関し、昭和13年4月6日に出版された新潮文庫版の巻末に掲載された犀星の「後記」に「当時の『中央公論』主幹瀧田樗蔭氏がそう命題したものであって、私は『發生時代』とつけたのである。私を紹介した瀧田氏の徳を思い、改題されたまま今日に至った。」との記載があります。
オリジナル原稿の公開により、このことが裏づけられました。
この件については、星野晃一著の「室生犀星 何を盗み何をあがなはむ」に「2 消えた表題「発生」のこと」に詳しく書かれていました。

性に眼覚める頃
新潮社刊
大正9年1月5日発行 四六判 函
装幀 恩地孝四郎
国立国会図書館デジタルコレクション http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/962886
青空文庫 http://www.aozora.gr.jp/cards/001579/card53012.html
参考価格 50,000 ~ *100,000(函欠15,000 ~ 20,000)*46,390
入手困難度 ★★★
初版、函付きは市場でも比較的流通していますが、人気があるため比較的高価です。
装幀は恩地孝四郎の手によるものです。
函欠けであれば12,000~20,000円程度で入手することができます。
性に眼覚める頃(初版)函
性に眼覚める頃(初版)本
性に眼覚める頃 奥附

小説「性に眼覚める頃」の初出誌となる「中央公論」大正8年10月号(第34年第11号、第375号)です。
 「創作」として犀星の「性に眼覚める頃」(p.1~p.60)の他、芥川龍之介著の「妖婆続篇」や江口渙著の「悪霊」が掲載されています。
 同じ雑誌に犀星と芥川龍之介が一緒に掲載されているのを芥川は「合乗り」と表現していたようです。
 この「合乗り」について、室生犀星記念館が公開していますyoutube動画「企画展『偉い友達 芥川龍之介』」で紹介されています。
私自身も、そこで初めて知りましたので早速紹介させていただきました。
https://youtu.be/_95tenNC2Vs



性に眼覚める頃(新版フランス装)
新潮社刊
大正13年10月5日発行 四六判、軽装廉価本
装幀 恩地孝四郎
参考価格 15,000 ~ 20,000
入手困難度 ★★★★
「室生犀星書目集成」(室生朝子他編)には、記載がありませんが、「室生犀星全集 別巻二」(新潮社版)の書誌には新装との記載があります。「室生犀星作品集」(新潮社版)の第一回配本の月報の伊藤信吉著「室生犀星書誌(1)」には、「新版フランス装」との記載があります。
一般的な軽装廉価版のようです。初版から献辞、序詩(春の寺)、例言が省かれている他は内容は同じです。また、装幀は初版と同じ恩地孝四郎氏です。
表紙、中表紙の絵は繊細で、初版とは異なる印象を持っています。初版に比較して、市場に流通している数が圧倒的に少なく貴重です。
性に眼覚める頃(新装初版)本 *1
性に眼覚める頃(新装初版)中扉
性に眼覚める頃(新装初版) 奥附

珍しい新装版の第7版です。昭和2年3月28日に出版されています。それにしてもなかなか市場にはでてきません。
初版と比較すると何箇所か、誤字脱字が修正されていますが、奥附が異なっている他は、構成は同じです。
性に眼覚める頃(新装第7版)本
性に眼覚める頃(新装第7版)中扉
性に眼覚める頃(新装第7版) 奥附

性に眼覚める頃(別版) 改造文庫
改造社刊
昭和8年4月8日発行 文庫判
参考価格 2,000 ~ 3,000
入手困難度 ★★★

性に眼覚める頃(別版)表紙
性に眼覚める頃(別版)裏表紙
性に眼覚める頃(別版)奥附

性に眼覚める頃(別版) 名作現代文学8
文潮社刊
昭和22年11月20日発行 B6版
参考価格 1,000 ~ 2,000
入手困難度 ★★★

性に眼覚める頃(別版)本 *1
性に眼覚める頃(別版)裏表紙
性に眼覚める頃(別版)奥附

性に眼覚める頃(別版) 
養徳社刊
昭和24年4月25日発行 B6版
参考価格 1,000 ~ 2,000
入手困難度 ★★

性に眼覚める頃(別版)本 *1
性に眼覚める頃(別版)裏表紙
性に眼覚める頃(別版)奥附

性に眼覚める頃(別版) 文庫本*
新潮社刊
昭和13年4月8日発行 文庫判
国立国会図書館デジタルコレクション http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1113361
参考価格 1,000 ~ 2,000
入手困難度 ★★★
巻末の犀星の「後記」に当初題名が『發生時代』であったとの記載があります。
また、「この『性に眼覚める頃』の初版本は新潮社から発表一年後に刊行されたが、私の小説家としての最初のものであった。濃い藍色の深い表紙。当時にあって些(いささ)か新活字と知られた、ほそい活字」とその装幀に言及しています。
性に眼覚める頃(別版)本 *1
性に眼覚める頃(別版)裏表紙
性に眼覚める頃(別版)奥附 第10版

性に眼覚める頃(角川文庫版) ※1
角川書店刊
昭和29年12月10日発行 文庫判 帯
参考価格 1,000 ~ 2,000
入手困難度 ★★★
本の題名となっている「性に眼覚める頃」の他、「蒼白き巣窟」、「美しき氷河」、「チンドン世界」が収録されています。
性に眼覚める頃(角川文庫版)本
性に眼覚める頃(角川文庫版)裏表紙
性に眼覚める頃(角川文庫版)奥附

性に眼覚める頃(角川文庫別版)
角川書店刊
昭和44年8月10日発行 文庫判 帯
参考価格 1,000 ~ 1,500
入手困難度 ★
角川文庫版に収録されている作品の他、「香炉を盗む」、「あにいもうと」などが新たに収録されました。
性に眼覚める頃(角川文庫別版)本
性に眼覚める頃(角川文庫別版)裏表紙
性に眼覚める頃(角川文庫別版)奥附

性に眼覚める頃(新潮文庫別版) ※1
新潮社刊
昭和32年2月25日発行 文庫判 帯
参考価格 1,000 ~ 1,500
入手困難度 ★
七刷では、奥附の検印がなくなっています。
性に眼覚める頃(新潮文庫別版)本
性に眼覚める頃(新潮文庫別版)裏表紙
性に眼覚める頃(新潮文庫別版)奥附


版別の収録作品の一覧表です。題名は全て「性に眼覚める頃」ですが、収録されている作品は大きく異なります。
性に眼覚める頃 復刻版
ほるぷ出版刊
昭和55年1月5日発行 第10刷 函、外函
参考価格 500 ~ 1,500
入手困難度 
復刻のための奥附と函裏面右下には「特選 名著復刻全集 近代文学館」と印刷されており、判別は容易です。非常に多く市場に出ており、簡単に入手することができます。
「特選 名著復刻全集」は、この「性に眼覚める頃」を含め全29点31冊、附録1、解説書1で当時の揃定価146,000円と非常に高価な全集でした。

別冊の「特選 名著復刻全集 近代文学館-作品解題」には、[復刻について]原本は四六判、丸背上製、包み函付。表紙は色鳥の子紙に金・赤の合わせ箔押。復刻版底本には日本近代文学館所蔵初版本を使用し、他に二冊参照した。復刻版表紙は山口製紙所色染鳥の子紙に箔押、見返は色染三X紙、扉は特種製紙デカンコットン白、本文は王子製紙春日井クリーム書籍、函上貼は四国製紙コニーラップクリームにベタ印刷。との表記があり、当時の装丁に対するこだわりの中で復刻されたことがわかります。
性に眼覚める頃(復刻)函
性に眼覚める頃(復刻)本
性に眼覚める頃(復刻)奥附


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