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古書籍収集でのジンクス
  • 初版より別版、普及版の方が手に入れにくい
  • めずらしいものが1度市場に出てくると、その後どんどん出てくる
  • 3度目の正直、3回目に入手したもが完本
  • 驚く価格で入手したものが実は本物
  • 発行部数の約10%が市中に残っており、0.1%が市場に出回る

初版より別版、普及版の方が手に入れにくい
「聖処女(普及版)」での出来事
「聖処女」の初版は昭和11年2月5日に函附きの上製本として新潮社より出版されています。元パラと呼ばれるオリジナルのパラフィン紙には書名、著者名、出版社名が印刷されており非常に貴重です。
あるインターネット古書店では、その初版本が5冊程出品されており、比較的入手可能です。(しかし、残念ながら元パラ附きは1冊もないようです。)
それに対し、昭和12年4月11日発行の軽装普及版は1冊程度しか出品されておらず、比較的高価です。
純粋な古書価としては、もちろん初版で、かつ上製本に函附きが高価ということになるのですが、貴重性ということでは普及版に軍配があがります。
「魚眠洞随筆」(三版)
第一書房刊の「室生犀星詩集」(改装廉価版)
「山の動物」(別版)
「蜜のあはれ」(別版)なども同様に初版本より貴重で手に入れにくい、あるいは高価な例です。

めずらしいものが1度市場に出てくると、その後どんどん出てくる
「哀猿記」での出来事
「哀猿記」は民族社から短篇代表作文庫(1)として昭和10年2月23日に発行された犀星の短篇小説集です。
菊半裁変形判という非常にかわいらしい装幀の1冊です。
4,5年前までは、市場にほとんどでることがなく、3年ほど前にインターネット古書店で5,300円で出展されているのを見つけ早速購入しました。
ところが、その後ヤフオクでも時々見るようになり、結局 3,500円、1,000円、1,400円と徐々に安価に3冊落札し、計4冊を所有しています。
「室生犀星書目集成」(星野晃一、室生朝子編)によると「函」と記載されていますが、これまで1度も函付きで出品されたものを見たことがありません。
同様の事が最近「鳥雀(とりすずめ)集」で、まるでデジャヴのように起きました。1冊目はヤフオクに出品されたもので、函の擦れが多く写真でも結構痛んでいるように見えましたが、最低落札価格が8,000円程度だったと記憶しています。その後、2冊目はインターネット古書店で5,000円で出品されたため、早速購入しました。さらに、1ヶ月もたたないうちに3冊目が、函附き3,500円で出品されました。そして4冊目が、1,000円で
3度目の正直、3回目に入手したものが完本
「逢ひぬれば」での出来事
「逢ひぬれば」は富岳本社から昭和22年10月15日に発行されたB5判の比較的大型本の詩集です。
これまでも市場にはほとんどでることがなく、4年ほど前にインターネット古書店でカバー欠け、並本が4,000円で出展されているのを見つけ購入しました。
その後は、ときどき市場に出てきており、同様にインターネット古書店で、カバー付(カバー背痛み、欠け)を3,000円で購入しました。このカバーは非常に薄い和紙でできているため、カバーが完全な状態で残っているものは、今後もでてこないのかなと思っていたところ、その後ヤフオクにほぼ完全なカバー付が出展され、幸運にも1,200円で落札することができました。段々価格が下がって、状態が良くなっていくという非常に幸運な出来事でした。
同様に、最近3冊目を入手した「新しい詩とその作り方(初版)」も、これまで初版をほとんど見たことはありませんでしたが、ここ1年で3冊入手し、3冊目はやはり函付きで入手することができました。

驚く価格で入手したものが実は本物
「動物詩集」での出来事
「動物詩集」は、日本絵雑誌社から昭和18年9月5日に発行された子供向けの詩集で、非常に人気があり復刻版も発行されています。
今から1年ほど前にヤフオクで「初版」が出品され、出展者が古書店だったことから安心して4,000円を超える価格で落札しました。
ところが、受け取って見るとなんとほるぷ出版の復刻版。奥附けにも、カバーにもはっきりと復刻版である旨の記載があり、がっかり。結果的には返品させていただきました。素人であればまだしも、プロであるはずの古書店だったにもかかわらず。非常に残念な思いをしました。
それから数ヵ月後、やはりヤフオクで初版、カバー欠けが出品され、今度は1,000円で落札。今度は、本物ではないと思いながら確認したところ、印紙もちゃんとしており、どこから見ても本物。
その翌月にも同様にヤフオクで初版、カバー欠の本物を2,000円で落札。
その頃、ヤフオクに出品されているもので、復刻版を間違って出品したため、出品者がキャンセルということも起きていました。この時も5,000円以上の価格が付いていたと思います。

発行部数の約10%が市中に残っており、0.1%が市場に出回る
「抒情小曲集」での出来事
発行部数が少ない程、入手することが難しいというのはあたりまえですが、どのくらい難しいのかを数値で試算してみました。この試算は、私の30年を超える古書収集の中で経験的に得たものです。
1.市中に残っている部数 ≒ 発行部数*10%
既に「愛の詩集」が自費出版されてから90年以上経ており、相当数が処分されたり、あるいは戦争で焼失している可能性があります。そう考えると、発行されてからの期間にも大きく影響を受ける可能性はありますが、ここでは計算に入れていません。
2.市場に出回っている部数≒ 発行部数*0.1%
市中に残っている中で、実際に市場にでてくる可能性のある量は非常に少ないようです。ヤフオクの効果で、以前に比べると多くなってきたようですが、それでも売る人の数は圧倒的に少ないようです。
例えば、「抒情小曲集」の初版は大正7年9月1日に600部自費出版されています。そうすると、市中に残っているのは約60冊、市場に出回るのは0.6冊ということになります。
ちなみに、現在インターネット古書店を検索して見ると1冊のみ出回っています。ほぼ当たっているのではないでしょうか。
それでは、前述の「動物詩集」はどうでしょうか。奥附では初版60,000部との記載があります。市中には6,000冊、市場には60冊との計算になりますが、実際にはその100分の1ぐらいでしょうか。児童書は、学校等で多くの手に触れたりして痛んだり、処分されたりして相当に残存が少ないようです。

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