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犀星の異装本
先日「信濃山中」の異装本を手に入れました異装本とは、なんらかの理由で通常の装幀と異なる意匠の装幀が施された本で、犀星の著書にもいくつか見ることができます。
異装本には分類するといくつかの種類があるようです。
最も一般的な異装本としては、以下の
「信濃山中」「旅びと」などのように著者が意図して複数の異装を企画したものがあります。また、装幀ではありませんが、「文藝林泉」のように巻頭の序の句が異なる複数のものが存在するといったマニアックなものもあります。
最も目に触れることがないものとしては「杏っ子」のようにベストセラーとなった際に、出版社がその記念として著者に贈呈する目的で、少数の特別装幀本を作成したものがあります。「室生犀星書目集成」(明治書院)には、「特別本(革装・丸背・背金箔押)二部、十万部発行記念として新潮社より著者に贈られる。」との記載があります。
また、変わったところでは以下の「女ひと」、「続女ひと」のように本の所有者が、独自で作成したものや印刷の段階で、本の方が多く印刷され、函が足らなくなったため、汎用的な函に入れたものなどがあるようです。

【信濃山中(しなのやまなか)】

左が標準の装幀のもので、右が今回ヤフオクで入手した異装のものです。これだけ意匠が異なるものはめずらしいようです。

【旅びと】

左が標準の共色のカバーで、右がパープル調の異装本カバーです。これもヤフオクで見つけて入手しました。

【女ひと、続女ひと】

左が標準のカバー付の装幀のものですが、右は前の所有者が独自にカバーを函に仕立てたものです。非常に良くできています。この手のもので多いのは、函欠を入手した後に、手作りの函を作成して保存するというケースです。

【勘吉記】

勘吉記の異装本(函)です。右の函の表の題字、著者名は本の扉のものを利用しています。また、背は本の題字、著者名を利用しているようです。印刷所で函が足らなくなり、汎用的な函に本の扉、背の版下を利用して造ったものだと思われます。貴重な1冊です。

【戦へる女】

「戦へる女」の異装本です。本来紙装薄表紙、角背であるものが、先日入手した三刷のものは紙装厚表紙、丸背となっており、所謂(いわゆる)上製本のような装幀となっています。同じ三刷のものでも、初版と同じ装幀のものもあり、どうしてこのような装幀のものが出版されたのかは不明です。
奥附を見ても違いが無く、一般的に上製本が高価であるのに対し、同じ定価となっています。
左が通常本、右が上製本(異装本)です。(それぞれ三刷)
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